日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

TVと80年代と素人の時代と新しいお笑い芸人/タレントの登場 〜街のあんちゃん(とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、ヒロミ、森脇健児…:普通の人)がメディア(TV)に出るようになった【吉本隆明『情況としての画像』】

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前回のお話

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吉本隆明と80年代のTVと素人の時代

ところで吉本隆明の話を少ししましたので、ちょっと大衆やメディアと関係して、今の世の中とも結びつきそうなお話を吉本隆明から書いてみたいと思います。ちょっと余談ですね。

 

大衆の併走者としての吉本隆明

吉本隆明は前回のように大衆(この場合庶民)から遊離した知識人の在り方を批判して、自らの立場を大衆に根ざしたものとして規定し大衆の原像という考え方を持ち出しました。そして戦後一貫して大衆との併走者として自らの思想を築いていったのですが(って言っても私はそのほんの少ししか知らないのですけど)、それは同時に硬派な知識人としては珍しいくらいに大衆文化やマスメディアに親しみを持っていた、という点があるかと思います(とはいえ当初は吉本隆明自体、硬派な思想家というよりサブカルチャーのように受け取られていたらしいことも読んだ覚えがあります)。

 

吉本隆明『マチウ書試論・転向論』】 

80年代と素人の時代 〜修得に長年かかる神技の芸と、いきなり出来る素人の芸

そして吉本隆明が80年代くらいのTVについて面白いことを主張していたことがあります。それは、今は素人の時代なんだ、というのです。

 

どういうことかといいますと、かつて芸の道というのは師匠に弟子入りし、何十年もの芸道の末に神技の域に達したものをありがたがって見ていた。それが、80年代に入って、なんだそんなもん、といって素人がズケズケやってきてはひっくり返すようになった。そして見ている方は、かつての神技の芸よりも素人が達人を乱暴にやりこめ、ひっくり返すようなものの方に喝采を送るようになった。つまり素人の行なっていることの方が芸として喜ばれるようになり、厳しい修行によって得た芸を馬鹿にして古いものにしてしまった。と、まぁだいたいこんな感じかと思います。

 

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たとえばご存知な(もしくは覚えている)方もどれくらいいらっしゃるかわかりませんが、かつては江戸屋猫八のような動物の鳴き真似のようなものが芸の本道で、いわば修得に長い年月がかかるようなものであった。それが今(80年代)はとんねるずなんかがTVでスタジオのカメラを倒すことが芸になっている。江戸屋猫八の極められた芸に対しとんねるずは素人の芸である。つまり、修得に長年月を必要としない。いわば素人の芸である。

 

吉本隆明『情況としての画像』】 

 

吉本隆明『ハイ・イメージ論』】 

(で、こちらは80年代以降を射程に入れた現代文化批評です。私は読んでいませんが、たけしや少女漫画などを真面目に真正面から取り扱っているそうです。硬派な知識人からはチャラい大衆文化を扱っているため馬鹿にされ、若い世代からは自分たちのものを年寄りに浅く扱われているように感じられて見向きもしてくれなかった、という、ちょっとかわいそうな評価もされたそうです。批判的だった柄谷行人に対して、対談相手の大西巨人は、しかし偉大な知性が現代という巨大な謎に挑んでいった姿勢は評価すべきでしょう、と述べていたこともありました)

 

まぁこんな感じなのですが、こう書くと批判的に読めてしまいますが(私の書き方が悪い)、むしろ吉本隆明は時代の変化として好意的に受け止めています。吉本隆明の次の世代の代表的な思想家である柄谷行人は逆に反対して、プロを尊敬している、と話されていたこともありました。ただ吉本隆明が素人の時代と読んだのは、TVではひとつのブームでもあったようです。

 

柄谷行人『ダイアローグ』】 

(柄谷行人の発言はこれらの対談集のどこかにあったかと思います。多分80年代でしたらこのどちらかだったと思うので載せておきますね)

 

街のあんちゃんと芸人 〜ヒロミ、森脇健児、そしてとんねるず

先にとんねるずの名前を出しましたが、別にとんねるずだけが悪いわけでも素人というわけでもありません。ただ当時のそうした人々の代表的チャンピオンだったわけで、他にもB21スペシャルのヒロミや、赤坂マラソンで有名な森脇健児など、今でも残るタレントがたくさん出てきたわけです。そしてヒロミ自身も復帰したての頃番組の中で、昔いっとき街の普通のあんちゃんがTVに出るっていう時があった、その流れに乗って出てきたのが自分たちで、その中で別格だったのがとんねるずだった、と言っていた覚えがあります。それが吉本隆明が素人の時代とまとめた80年代の頃なのだと思います。

 

横山やすしダウンタウン 〜または学校(NSC)出身者

そしてその中で未だに強烈な存在感と影響力を持っているのがダウンタウンと言っていいかもしれません。しかしダウンタウンも吉本の養成学校であるNSCの第1期生でした。その中で最も頭角を現したコンビがダウンタウンだったわけですが、やはり学校出身で師匠に弟子入りしたわけではありませんから、古い芸人の間では認められなかったようです(そういえば東京進出後一緒に番組をしていたウッチャンナンチャンも映画監督の今村昌平が創った日本映画学大学の前々身である横浜放送映画専門学院出身で、お笑いですらない学校出身者でしたね。ただこの学校、出てくる人材がちとすごいと思うんですけど…)。

 

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たとえばやすきよの愛称で親しまれた横山やすし・西川きよしの両師匠のうち、やすし師匠はまったく認めてなかったようです。どこかで読んだ覚えがあるのですが、芸なんてのは師匠にどつかれながら身につけていくもんで、学校なんかいってどないかなるもんやあるかい、とNSC出身者にけんもほろろな相手をしていたそうです。松本人志浜田雅功も、2人ともやすし師匠に胸ぐら掴まれて凄まれたことがある、と言っていましたし(なんでもダウンタウンの前のコンビ名がライト兄弟で、やすし師匠は飛行機好きだから喜ばれるんちゃうか、と吉本の社員に言われて挨拶に行ったら、お前ら本当に飛行機のこと知っとんのかい、と胸ぐら引っ掴まれて怒られたとか)、同じNSC1期生でダウンタウンと同期のハイヒールのモモコも、楽屋でやすし師匠の子供の相手をして遊んでいたら、舞台から戻ってきたやすし師匠に、誰の子供や思っとんねん、この野良犬、と怒られたそうです。すごい話ですね。とても今のダウンタウンたちの立場からは想像できないお話です。

 

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これらの話を私はTVで見たので、かなり脚色されたり面白く盛られたりしてネタにされているのだと思いますからそのまま信じてはいけないのかもしれませんけれども、一応吉本隆明が述べていたことと似たことを当時の当事者たち(玄人側でも素人側でも)も感じていたのだろうと思われます。そして神技の芸より素人の芸を好まれたのがバブル以降のTVの流れだったとするならば、今は一体どうなっているのか、ということなのですが、それが実はネットに移動したのではないか、ということを続けてみたいのですが、今回は長くなったのでこれで終わりにしたいと思います。次書く時まで書きたいこと覚えてられるかなぁ。最近間隔開くからなぁ…

 

次回のお話

https://www.waka-rukana.com/entry/2020/03/03/200001

 

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お話その178(No.0178)