日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

福沢諭吉が努力する英語習得の様子 〜明治日本の立派な姿【福翁自伝】

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昔の日本の外国語習得の様子

渡部昇一が模範としたような文法の水準からの外国語理解、というものはどのようなものでしょうか。実はこれもちゃんと昔の本に書かれていたりします。

 

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福沢諭吉による時代との直面

それはかの有名な福沢諭吉の自伝にあります。福沢諭吉は幕末に日本の外に中国やインドを越えた、未知の世界であるヨーロッパが存在することを知った人です。幕末人の衝撃ですね。

 

この衝撃は現代の我々からすると、今さら教えられるほどのこともないような気がします。散々映画ドラマに再現VTRと見させられてきました。しかしその衝撃は国がひっくり返ったほどのものでしたから、同時代人にとっては自分たちの存在からひっくり返りかねないほどの驚きと危機感があったようです。

 

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福沢諭吉はそんな時代の人でしたから、どうすればこれから日本がたちゆくか、ということを考えました。福沢諭吉だけではありません。多くの人がそう考えました。坂本龍馬などはその典型的なヒーローとして司馬遼太郎が描き、今でもヒーローです。しかし別に坂本龍馬だけがヒーローというわけでもありません。この危機感を前に行動した者もいれば、思索した者もいます。そうした人々が集まりお互いに影響を与えあいました。そして集まって学んでもいました。

 

緒方洪庵の適塾での外国語習得の様子

若き日の福沢諭吉は大阪で緒方洪庵の開いた適塾という場所で学んでいました。ここでの様子が自伝に書かれていて、猛烈な勉強の様子が垣間見れます。

 

とにかくなんでも徹底して読み、一度徹底して読めば他の語学は楽になる

まず入ってくるのは蘭学書、つまりオランダ語の本でした。適塾のみんなはこれこそが世界の最先端と、とにかくそこに書かれていることを読めるようになろうと必死でした。それはオランダ語であればなんでもいいという勢いで、中には自分たちとまったく関係のない、関心すらないような内容の本であっても読めないものだから必死になって読みました。ようやく兵法書らしきものが見当つくようになり、集中して読んでいると、今度はどうやらオランダはちょっと陰っているようで、イギリスがもっと重要らしいということに気づきます。今までオランダ語で苦労していた労力は無駄だったのか、と一同落胆するのですが、いざ英語の本を読みだすと、一度徹底的にオランダ語を学んだものだから以前とは比べ物にならないくらいに読めるようになるのが早かったといいます。このあたりが渡部昇一が言う文法からの理解によって、他の同系統の言語も理解出来る、ということでしょうね。

 

文字通りの寝食を忘れた学習

またその勉強の態度もすごいものでした。福沢諭吉の言い分では机の前に座って一日中蘭学書を読み、眠くなるとそのままに横になり、目がさめるとまた机に向かったといいます。とにかくずっと蘭学書にかじりつきで生活のことなど脇目も振らないので、適塾で世話をしてくれていた女性たちには大変不評だったそうです。おそらく慶應義塾大学や明治期の学生のバンカラ風土はこんな逸話から発しているのかもしれませんね。

 

余談:手塚良庵と剣の達人としての福沢諭吉と母

もちろん遊んだりもしなかったそうですが、それでもやっぱり血気盛んな青年志士。ちょっといけない場所に遊びに行く者もいたそうですが、福沢諭吉は軽視して行かなかったそうです。遊んでいた者は少なかったが、大成しなかった、なんて述べていた気がします。ちなみにお遊びに入れあげていた仲間に手塚良庵という人がいるのですが、なんと手塚治虫の曽祖父になります。手塚治虫は『陽だまりの樹』という作品でこの人を主人公にして描いています。福沢諭吉も出てきますよ。

 

また余談ですが、福沢諭吉は剣の稽古もずっと続けていたそうで、相当の腕だったといいます。福田和也によれば、幕末最強の剣士は福沢諭吉だったのでは、という説まであるそうです。まぁ茶飲話なのか本当の学説なのかは私にはわかりませんけれど。

 

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他にも福沢諭吉の家は武士でしたがかなり貧しく、しかし母は自分たちが苦しいにもかかわらず周りの貧しい人々も分け隔てなく接し色々と世話をしていた、という記述もあったかと思います。子供の頃家に帰ると知らない人が上がっていて、母が着物を繕っていた、とか書いてあったかな。詳しくは実際に読んでもらって確かめてくださるといいかと思いますが、こうした余談の中にも福沢諭吉の考えの一端や生成の理由も垣間見えてくるかもしれませんね。

 

参考となる本

【福翁自伝】 

福沢諭吉の自伝。洋学の勉強だけでなく、破天荒な福沢諭吉の行動や人生も書かれていてとても面白いです。なんでも日本における自伝文学の最高傑作とか言われたりしているそうですが納得の面白さです。福沢諭吉は一万円の人としか私たちは知りませんが、滅茶苦茶な人でその様子だけでも面白くなってしまう人のように見えてきます。でも、当時実際につきあう人は大変だったろうなぁ。

 

【手塚治虫『陽だまりの樹』】 

こちらは手塚治虫による手塚良庵を主役にした幕末ロマン。とても面白いです。手塚治虫の作品ですからその質は折り紙つきですね。福沢諭吉がどこに出ていたのかは忘れました。何巻だったかなぁ。手塚良庵が適塾に通っている時ですから、最初の方だったかと思います。

【福田和也『超・偉人伝』】 

福沢諭吉の剣の腕前について、たしかこの本に載っていたかと思います。これは福田和也のオモシロ教養講座で、ほとんどコントか落語のようにして教えてくれる楽しい作品です。シリーズ名もないのですが、実はいくつか続きがあります。笑える本です。余談ですがTVにも出ている新潮社の名物編集長、中瀬ゆかりさんが主人公です。

 

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 お話その55(No.0055)