遊ぶための金儲けと目的としての労働 〜働き者はいいことだ
労働が目的としての近代資本主義
資本主義が基本的に金儲け主義で遊んで暮らしたいから金が欲しい、というものだったとすれば、それと異なるものとしてウェーバーのいう近代資本主義はどう違うのでしょうか。今だってそんな変わっとらんじゃないか、と思ってしまいますね。
しかしウェーバー先生は違うと言うのでした。それは近代資本主義は労働が目的なのであり、お金が目的ではなかったのだ、というのです。そしてその目的となる価値観を与えたのが宗教である、と、まぁ、大体このようなことを考えたのでした。
プロテスタント・カルヴァン派の勤労の精神
ウェーバー先生によると、キリスト教の、それもプロテスタントのカルヴァン派というものの中に秘密があるというのです。このカルヴァン派というものは勤労を尊びました。つまり働くことは尊いのです。これはよくある考え方ですね。日本では学校の怪談で有名(?)な二宮金次郎がいます。そして働くことがいいことだ、という考え方が宗教の中にあることは別段おかしいことではないかと思います。漫画にもある七つの大罪に怠惰がありますから、キリスト教的価値観の中には怠け者は最初から否定的に捉えられていることになりますものね。
これを裏返すと働き者が肯定的に捉えられることになります。これは不思議ではありませんね。
産業時代の古くて新しい価値観
しかしこの働き者のイメージは、基本的に農業時代のものでした(多分。そんなことは書いてなかった気もしますから、私の勝手な考えかもしれません)。いや、もしかしたら牧畜でもそうかもしれませんが、とりあえず古い時代の価値観です。というのもキリスト教が成立した時代は古代ですし、プロテスタントが成立したのも封建時代です。当然資本主義、もしくは産業時代に生まれたものではありません。二宮金次郎も薪背負ってますしね。
勤労が封建時代の価値観だったとしても、そこで培われた価値観を次の時代に忘れるとは限りません。特に働くことはいいことだ、とはいつの世も通用しそうな価値観です。農業だからといって守り、産業になったからギャンブルで一発当てたろ、と思い変える必要もないのです。そうすると、この働き者の価値観を抱いた人たちは、産業時代にどうしたでしょうか。やはり猛烈に働いたのです。
それもウェーバーが峻別した普通の資本主義の人たちとは違い、遊んで暮らしたいわけでもなければ楽して過ごしたいわけでもありません。働くこと自体、それが神の意に叶ったことであり、天国へ入れる小さな切符なのです。そして働き者こそいいことだ、という価値観を抱いている人たちは、当然かなりの敬虔なキリスト教徒であり熱心な信徒です。ですからこの価値観も行動もブレることがありません。かつてイエズス会のNo.2でありながら世界の果てともいえる日本まではるばるやってきたフランシスコ・ザビエルのように、強烈な意志をもってやり続けやり遂げるのでした。
ちょっと長くなりましたので、また次回にまわしたいと思います。
気になったら読んで欲しい本
【ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』】
しばらくこの本からのお話になるかと思います。
もちろん私の書くものはこの本を水で薄めたものにしかなりませんから、もし興味を持たれたら読まれることを願ってしまいます。一応、ウェーバーの中では読みやすいはずです。でも芥川賞作家の奥泉光は学生時代にこの本読んで学者になるの諦めた、みたいなこと書いてましたから、やっぱり難しいといえば難しいです。読みやすいのは他のウェーバーの著作と比べて、ですから、読んで難しいじゃん‼︎ と言われても反論できません。いやもう、他のウェーバーの本が難しすぎるんだ。
何故ウェーバーの他の本がより難しく、この本がややましかというと、私の実感ではウェーバーの博学から繰り出される恐ろしいまでの博引旁証がこの本では少ないからです。どちらかというと理論的なスケッチで、比較的理解しやすい気がします。他の本ではその情報量の多さに読んでるうちに迷子になってしまうのです。
ただ、この本にも迷子ポイントがあり、それは注が平気で数ページ続くという問題があります。難しいと思う人は、とりあえず注すっとばして読んでみてもいいかもしれません。そしていつか2度目に読む時にでも注も含めて読んでみよう、と思って棚上げして、とりあえず読み終えることだけを目的にした方がいいかもしれませんね。ウェーバーに限らず、古典って読んだからってわかるものではありませんので、最初はとにかく読んだるわい、と気合いをいれるくらいから始めた方がいいかもしれません。またあまりに合わなかったら読むのやめることです。嫌いになりますからね。
まぁ、まだこの本については載せるでしょうから、その時に色々書いてみたいと思います。
次の日の内容
https://www.waka-rukana.com/entry/2019/09/23/193057
前の日の内容
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お話その102(No.0102)