地球規模の資本主義 〜中心と周縁の近代世界システム
資本主義が成立されるためにはウェーバー的な資本主義の精神を持つ禁欲主義者が必要でしたが、一度成立した資本主義はどうなるのでしょうか。ゾンバルト的な浪費家がお金使って回していくだけでしょうか。
ちょっとこれに関係する話を前に書いた覚えがありますので、もう一度考えてみましょうか。
https://www.waka-rukana.com/entry/2019/08/16/193003
ウォーラーステインは資本主義を地球レベルで考えた人でした。実に壮大です。しかもそれが空想的な発想で終わってしまうわけではなく、実に重厚な理論にしてしまっているので読むと圧倒されてしまいます。つまり私はよくわかっていないのでした。というわけで今回もちょっとあやふやです。いつものように本を下に載せておきますね。
地球規模のシステムとしての資本主義
ウォーラーステインの考え方は資本主義を1つのシステムとして捉えることでした。それも中心と周縁という地域差からくる世界貿易の形をとるようです。
ヨーロッパは大航海時代をへて世界中に手を伸ばしましたが、それは西洋文明の強力な武器である科学を持たぬ地域に科学で武装して上陸するようなものです。そして本国では見たこともないような珍しいものが沢山あります。それを持って帰れば高く売れるわけで、あちこちの地域に出張って行っては欲しい物を持って帰って売りさばきます。
これを繰り返していけば定着してしまいますね。それを経済的な関係だけでなく、より合理化して持ち帰れるようにしようとすれば政治的にも自分たちのものにしてしまえばいいわけです。つまり植民地ですね。植民地にしてしまうと文句言われずに好きなだけ持って帰って、しかも対価を充分に払う必要もなくなってきてしまいます。
中心と周縁の搾取のシステム
これが世界経済の中心と周縁の関係になるそうで、貿易で欲しいものを取れるところを、取れるだけ取れるように政治的にも経済的にも手中におさめてしまうようです。この関係が最初はヨーロッパで成立した。そのためヨーロッパが中心で、その中心からの距離で周縁が決定された。つまりヨーロッパからではアフリカや中国やインドが丁度いい距離にあったようです。そのためヨーロッパ中心の世界経済の時代にはこれらの国が取られるだけ取られたようです。
アフリカは奴隷産出国、中国はアヘンでガタガタ、インドなど国営企業化、もう無茶苦茶です。今なら到底許されないことでしょう。いくら国内に良心的意見を発言する層がいても、絶大な支配権と利益を持つ以上耳を貸さないいい例ですね。もしかしたらリベラルな認識が一般通念であるのは、ヨーロッパ人の持つ当時へのコンプレックスなのかもしれませんね。私たちは外国人ですから歴史の1ページとしてしか捉えませんが、本国の人間からすれば当事者の行動ですからね。
中心の移動と周縁の変化
しかしこの中心は時代と共に移っていきます。経済的覇権は同じままに握られるとは限らないようです。その後ご存知のようにアメリカに移動しました。となるとアメリカが中心となり、そこから測れる距離に周縁となる国が含まれるようになります。日本などはヨーロッパ中心時代は遠かったので植民地にならずにすんだ、とウォーラーステインは考えたようですが、アメリカ中心時代になると日本はアメリカの強い影響下にいて抜け出すことなど出来なくなっていますね。
地球規模の経済圏=資本主義=近代世界システム
こうした地球規模での経済圏が資本主義と共に成立した、というのがウォーラーステインの考え方のようで、近代世界システムと言います。なんとも格好いい名前ですね。
ここで問題なのは単純に経済的覇権を握っている中心国が、周縁国を経済的に取れるだけ取ってる、つまり搾取しているだけでなく、政治的にも直接間接支配しており完全に抑え込んでしまっている関係になっていることですね。つまり資本主義は世界規模になると、弱い国から奪い取っていくことになるのかもしれません。多分これは資本主義の負の側面を捉えたマルクス以降の考え方に連なるような気もしますね。事実レーニンの本のタイトルは『帝国主義論』で副題は資本主義の最高の段階による、だったと思います。もしかしたらこれは資本主義の自然な成り行きなのかもしれませんが、私はレーニン読んでませんのでよくわからないのでした。全然違ってたりして。そしたらこんなこと書いてて恥ずかしいですね。
気になったら読んで欲しい本
【ウォーラーステイン『近代世界システム』】
ウォーラーステインの本。巻数が文字化けしてますが(直った?)、本来はローマ数字で上から1.2.3.4巻です。順番に時代が新しくなり、第5巻を研究中だったのですが先日(当時)亡くなられてしまいました。とても残念です。こんなすごい内容、おいそれと続くことは出来ないでしょう。読むのも大変…と言いつつ、私は1巻しか読んでません。ちなみに私が読んだのは岩波選書版でした。そのうち続きも読みたいですけど、かなり腰を落ち着けないと無理な気がします。一冊だけでも大変だったような覚えが…
【レーニン『帝国主義』】
レーニンの本。読んでませんのでわかりませんが、関係しそうですし載せておきますね。光文社古典新訳文庫でも出てるんですね。こちらの文庫は今まで他で出てなかったような古典も新訳にしてくれてありがたい限りです。簡単に買えますし、昔の訳本も古本で高価になっていたのが安くなってくれました。スピノザとか高かったんだよなぁ。ありがたいありがたい。
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