前回のお話
ハイデガーと実存主義者たち
ハイデガーと実存主義
ハイデガーに影響を受けたのは別に日本人だけではなく(当たり前か)ヨーロッパでもそうでした。その中でなんとなく直接ハイデガーの後を引いたような印象があるのがサルトルかもしれません。
サルトルは実存主義の代表的哲学者ですが、同時に作家でもあります。小説にも『嘔吐』という有名なものがあります(でも文芸批評家の江藤淳は、サルトルの小説は『嘔吐』以外面白くない、なんて書いてたなぁ)。ちなみに日本に講演しにきたこともあって、手塚治虫の漫画にそんな様子が1コマ書いてあったような覚えがあります。
【手塚治虫『ネオ・ファウスト』】
(たしかこの作品に学園紛争当時の様子が書いてあって、その中でサルトルが日本に講演に来るぞ、なんだ今更サルトルか、なんてセリフがあったかと思います)
【サルトル『嘔吐』『実存主義とは何か』】
(サルトルの本はこちら。小説は読んだことありますが哲学の方はまだ読んでません)
実存主義者とは異なるらしいハイデガー
しかしどうやらハイデガーはサルトルたち実存主義者には納得いってないらしく、私と実存主義とは違う、といったようなことを述べていたようです。サルトルたちは実存存在である人間を扱っているが自分は存在そのものを扱っている、といったようなことだったかと思います。
ですがハイデガーも師であるフッサールから当初自分の後継者のように思われていたにも関わらず、主著を書いた時点で自分とは違う考えであるとフッサールはみなして決別したらしいので(ちなみにナチス台頭の背景で、フッサールがユダヤ人、ハイデガーがドイツ人という事もあったそうです)、なんだか似たようなことを繰り返しているような気もしますね。偉い人とは師弟関係でも難しいものです。
サルトル以外にも影響した実存主義者たち
しかしハイデガーの影響はサルトルだけでなく、他にも実存主義の人たちを生み出しました。サルトルと一緒に括られるようなヤスパースやマルセルといったような人たちのようです(読んでないからよく知らない)。またその影響は実存哲学や実存主義と呼ばれるものだけではなく、後々のデリダのような構造主義とみなされる人たちにも影響が及んでいるそうです(これまた読んでないからよく知らない。デリダはとても難しいらしい)。
【ヤスパース『哲学』,マルセル『存在と所有』】
(こちらが代表的な本になるかと思います。私はどちらも読んでません)
こうした影響の広さと深さからハイデガーは20世紀最大の哲学者と呼ばれているのかもしれませんね。
ちなみにハイデガー全集が現在も日本で翻訳中なのですが、出版元であった創文社は廃業されてしまいました。とても残念です。
次回のお話
お話その289(No.0289)