前回のお話
アダム・スミスと古い時代の天文学史
宇宙についての考え方の蓄積=天文学史
コペルニクスやティコ・ブラーエ、ケプラーにガリレオ、と宇宙の世界についての見方や考え方が新しくなってくるのはなんとも新しい時代の予感を感じなくもありませんが、その前にはアリストテレスによって打ち立てられ、プトレマイオスによって体系化された宇宙観というものがありました。
それは宇宙についての認識が新しく変わっていくということを意味するのですが、しかしその時点から過去を振り返ると別のものも見えてきます。そう、宇宙についての理解に対する歴史というものが現れてくるわけです。つまり天文学史ですね。
【アーレニウス『科学的宇宙観の変遷』】
(たとえばこんな本もあるそうで、古代から20世紀初頭までの宇宙観を紹介したものだそうです。残念ながら私はまだ読めていません)
古い時代の宇宙についての考え方
しかし天文学史というと、私たちにはつい近代的な学問の歴史を思い浮かべてしまいます。それこそコペルニクスからガリレオにいたって、今日の天文学へと向かうようなものです。アリストテレスとかプトレマイオスとかはこうした近代的な天文学が生まれる前の前史としてちょっぴり触れられるだけのものとして終わります。
けれどもこうした歴史が今日書かれただけでもありません。昔にも同じようなものが書かれていました。そしてその頃の歴史はアリストテレスやプトレマイオスから書かれる歴史で、今のものと全然違っていたりします。
アダム・スミスと古い時代の天文学史
そんな天文学史を著作の中で書いた人が昔の偉い人にいるのですが、知ってみるとびっくりする人だったりします(私はびっくりした)。それがアダム・スミスだったのです。
【アダム・スミス『国富論』】
アダム・スミスは経済学の祖として有名ですが、開祖であったということは、まだ経済学自体がそこまで明確ではなかったことも意味するかもしれません(スチュワートは既にいたのでそう言っていいのかはわかりません)。そしてアダム・スミスは元々倫理学の先生だったそうです。倫理学の一環として、経済問題を扱ったのが経済学の誕生となったわけですね。
【ステュアート『経済の原理』】
(アダム・スミス以前に経済学を樹立していたらしいのですが、アダム・スミスはステュアートを非常に意識していたのに自著には一度も言及しなかったそうです。そしてその経済学はアダム・スミスとは根本的に性格が異なるものとのことです。私は読んでもさっぱりです)
哲学者としてのアダム・スミス
そしてアダム・スミスは他にも哲学的な著作も書いています。そうしたものを集めた本があるのですが、この中に他のものと一緒に天文学の歴史として書いているのでした。
【アダム・スミス『アダム・スミス哲学論文集』】
(それがこの本なのですが、天文学だけでなく他の分野についても哲学を歴史的に整理してまとめてあったかと思います。私は天文学の部分だけが強く印象に残っています)
まぁ読んでも私にはよくわかりませんが(涙)、しかし面白いのはこんな天文学史、それも近代以前の天文学史を経済学の祖であるアダム・スミスが書いているということです。まるで関係ないような気がするのですが、解説によればこの天文学の歴史はアダム・スミスの哲学関係の著作としては代表的なものになるのだそうです(と、書いてあったような気がする)。わからないなりに読んでもたしかに立派な著作だと感じることは出来ます。
このようなものを経済学において歴史に残る学者が書いているということにちょっと驚いてしまいますね、というお話でした。いえ、それだけなんですけどね。
次回のお話
ジョルダーノ・ブルーノと宇宙は無限としたしたことによるキリスト教内でのキリストの相対化という問題 - 日々是〆〆吟味
お話その255(No.0255)