前回の内容
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保守と左翼の相違点 〜歴史への志向性と社会への批判
とりあえず保守というものの立場の難しさはなんとなくわかったとして、ではなぜあまり一致しないはずのものがまとまって保守として成り立っているかといえば、新しい勢力であるものに対してまとまっているからだ、というのがマンハイム先生の考え方のようでした。保守とは保守以外のものによって規定されている、とでもなるのでしょうか。
保守と左翼 〜なにが違うの?
それはともかく、保守、保守と言う中でじゃあ保守の対抗しているのはなんなのだ、と思い巡らせてみますと、今のところ左翼とでもいえそうですね。ネットでちょっと検索してみるだけでもあちこちお互いに悪口言ってるように見えます。では保守と左翼ってなにが違うんでしょうか。はたまた似ているようなところってないんでしょうか。
違うところはたくさんありそうですが、もともと保守の中だって違うでしょうから、一方の中にも違いがありそうです。下手をすれば自分の気に入らないものを気に入らない方で文句言うために保守とか左翼とか使われているのかもしれません。もしそうだとすれば違うところなんて多すぎて探す方が難しいくらいなのかもしれませんね。
逆に似ているところってなんなんでしょうか。どちらも自分の気に入らないものを槍玉にあげている、とかでしょうか。しかしそうした風景はネット時代になってからであって、それ以前は一応保守も左翼も一定の土台があった上で成り立っていたはずですね(違うのかな)。
共通する観点 〜現状の社会への批判
もうちょっと昔のものに遡って考え直してみましょうね。たしかバークはフランス革命以降の社会を批判したんでしたね。これが保守の聖典とみなされました。一方左翼はなんでしょう。やはりマルクスでしょうか。マルクス以前にも社会主義者はいましたし一概には言えないかもしれませんが、代表者はマルクスでしょうね。でもマルクスにしろ以前の社会主義者にしろ、資本主義が現れてぐちゃぐちゃになった社会を批判したのでした。
となると共通することはひとつありそうです。それは今の世の中=社会を批判している、という立場です。バークはフランス革命後の社会を批判しましたが、マルクスたちは資本主義後の社会を批判しました。現在の社会状況に問題がある、という点ではどちらも共通の認識をもっていそうです。ただ批判した時代と対象が違うわけですね。
相容れない観点 〜歴史的志向性の違い
じゃあ、いわば世直しが共通の観点なんだから仲良く協力すればいいじゃないか、と思えますが、上の観点からすれば保守は革命に反対で、左翼は革命によって世の中を変えようとするので相容れないわけですね。なんだかちょっと納得がいってきそうです。
そしてこれはもうひとつ対立する観点を生むような気もします。それは保守は過去の一時代を理想化することで社会の秩序を見出そうとします。一方左翼は今の社会を変えることによって新しい社会を作り出そうとします。いわば保守は過去志向の世直しで、左翼は未来志向の世直しなわけですね。そのため保守は綿々と続いてきた伝統や文化に人間の英知があると考えますし、左翼は未来の社会を建設するために方法(理論?)が必要とされます。
こう考えてみますと、案外似ているようなところもあり、違っているところもある、ということになるのかもしれませんね。ですから左から右とか右から左に結構移動出来ちゃうのかもしれませんね。
次回のお話
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気になったら読んで欲しい本
浅羽道明『右翼と左翼』
まだ読んでないんですが、多分わかりやすくまとまってあるんじゃないかと思います。私の書いているものはあてになりませんから、ぜひ著名な評論家の説明と意見を読んでください。
西部邁『日本の保守思想』
西部邁『保守の真髄』
亡くなってしまいましたが、日本における著名な保守思想家として西部邁がいるかと思います。最近まで活躍されていましたので、最も現在的な保守だったと考えられますから保守とはなんぞや、と考えてみるのにはいいのかもしれません。ただ私は読んでいません。とほほ…
西部邁,佐高信『難局の思想』
で、その西部邁と左派の佐高信の対談。色々出てるみたいですが、新書が手に取りやすいかと思って選びました。これも読んでません。しかし保守と左翼というものについて考えるのにいい材料になる気がしますね。
追記
ブックマークのコメントで、読んでない本をオススメするな、と指摘されましたが、別にオススメしているわけではありませんよ。今回のお話で気になったら読んで欲しい本、ということで、出来るだけいろんな本を直接読んで考える材料にして欲しいだけです。むしろ本を読んでもらうことの方が目的で私の書いたものはどうでもいいのです。ただ今回は私の読んでいる本の中で載せられるものはぱっと思いつかなかったのでこうなっただけです。
一応前回までも載せていますが、読んだ本を載せておきます。
バーク『フランス革命についての省察』
マルクス・エンゲルス『共産党宣言』
バークとマルクス、エンゲルスの本ですが、2冊とも新しく現れた社会現象に対して批判的な態度で臨んでいるのは同じかと思います。しかし一方は保守、もう一方は左翼の出発点となりました。それはもう水と油のように全然違い反目しあっていますが、上に述べたように似ているところと違うところを比べながら読んでみると面白いかもしれません。
また互助会とのご指摘もありますがブックマークのお返しはしておりません。そう非難するのは読んでくれている方々に失礼かと思います。
もうひとつ保守と左翼の対比はおかしい、とご指摘いただきました。その通りで何故かごっちゃになって相手を非難しているのでお互いの共通点や違いを書いてみた次第です。ただそうしたことを書くのは私の力不足であることはその通りだと思います。そのためにちゃんとした本を載せているつもりなので、適切な判断をするためにもそちらをご覧ください。
写真がないと本当に読んでるのかわからないよ、ともコメントされたので一応載せておきます。幸い本棚から見つけることが出来ました。
それでも読んでいるかどうかは確かめようがないかもしれませんが、たまたま前回書いたものには引用した箇所もあるのでそうしたところで判断していただくしかありません。読んでいないものを載せるな、というのもひとつの意見ですが、読んでいないものを誤魔化して読んでるふりをするのは簡単に出来るかと思います。ですからこうして写真でも載せないと本当かどうかわからなくなるのですが、私自身としてはその線引きを明確にして本を載せるように心がけているつもりです。私自身は専門家でもなく確かなことは書くことは出来ませんが、少なくともこうした本は確かな評価の上に残っている古典とみなされています(良し悪しは別として)。その上で読んでいるものと読んでいないものをはっきりとさせ(時々忘れていることもあるかもしれませんが)、私の書くものの水準を明確に出来るよう心がけ、関心を抱いた人は確かな本へと手を取れるよう配慮しているつもりです。素人としての手慰みを踏まえた上で無責任にならずどう書いていくかということを考えた上での判断なのでご了承ください。
また今回のお話までにも話の流れがありまして(本ブログは続きものとして書いています)、経済の中心が土地から生産へと変わり資本主義が生まれたのだが、生産が行き着くと消費経済になってしまい、そうなると広告の持つイメージ上位の認識が社会へと行き渡り、商品だけでなく人まで同じようにイメージ化され、政治までもがイメージ的になっている中、同じように保守や左翼もイメージとして消費されるようになっているように見えるけど、その元々であるバークやマルクスは前の時代に対して自分たちの立場を考えている点で案外似てるのではないでしょうか、というお話の続きでもあるのでした。保守と左翼を対比するのは頓珍漢に思われるかと思いますが、消費社会のイメージ化の一環とでも理解していただければ幸いです。保守や左翼を真面目に比較したものではありません。消費社会の発展とともに政治までその中に組み込まれてしまった、という社会の変化の一環についてのお話です。
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お話その143(No.0143)