日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

田舎から都市への近代的大移動と結果としての自由と犯罪 ~新しい時代と新しい生活様式の副産物

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前回のお話

https://www.waka-rukana.com/entry/2019/12/19/190044

 

近代的大移動と近代社会 〜もしくは自由と犯罪

民族大移動とヨーロッパの誕生

人がたくさん移動して世界が変わってしまうなんて、まるで民族大移動によって今のヨーロッパが生まれたような話ですね。大昔のヨーロッパはローマでしたが、そのローマの東から民族大移動が起こって腐敗していたローマは滅び、今のヨーロッパ諸国が誕生しました。そして富の中心が土地から生産に変わったおかげで、人の根付く場所も田舎(土地がいっぱいある)/共同体から都市(工場が集まってる)/社会へと変わっていったのかもしれません。

 

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違うのは民族大移動はヨーロッパだけの話でした。もしくはユーラシア大陸での変化がヨーロッパにまでしわ寄せされたと言えるのかもしれません。しかし生産中心の世の中に変わってしまうことで世界の中心となったヨーロッパ人たちにとってはヨーロッパという地域だけではおさまらなくなってしまいます。そしてヨーロッパ産の文物が世界へとまき散らされて近代的世界が地球を覆いつくすようになったわけですね。

 

生産様式の変化と田舎から都市への大移動 〜世界中で共同体から社会に変わる

となると人間の移動も世界中でおこるようになります。なぜなら今度の移動は生産様式の変化によるもので、世界中がその方法に倣わされる必要があったからです。そしてそれは田舎から都市へと人々をかきあつめるようなものでした。

 

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そのため世界中で人間の移動が起こります。どこもかしこも田舎から都市へと人が集まるようになり、同時に共同体ではない人間集団の生活の場として社会が形成されます。いえ、そもそも都市という概念自体がそうした時代にそうした背景があって生まれたのかもしれません。そして社会であれ都市であれ、それまでの人間には想像しなかったような生活様式が生まれ、それまでの習慣や英知によって制御されてきた人間の営みが(ある意味では)解放されました。

 

自由と欲望と犯罪

こうした人間の自由が解き放たれたからこそ、人々は豊かになる可能性も与えられ、実際成功した人々も現れました。しかし同じように自由が無秩序にもなり成功とは違う形で自らの望むものを得るようになっていったのかもしれません。

 

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たとえば最近でも大成功した会社の社長が女優と付き合ったり、未成年の少女を自宅に閉じ込めてしまったりした話が話題になりますが、どちらもある意味では特定の異性を求める行動であることには変わりありません。一方は成功者で一方は挫折者の行いなわけです。しかしその根底はそうした欲望を持つことが許された自由な社会にあります。それを社会的に成功した者は合法的に得られるのですが、挫折者は犯罪を犯すしか得る方法がなく百万千万の人間の中には実行する人も出てきてしまうわけですね。

 

近代はこうした自由な世界(もしくは社会)なのですが、代わりにその自由によって犯罪を必ず内包する世界のようです。

 

次回のお話

https://www.waka-rukana.com/entry/2019/12/23/190056

 

気になったら読んで欲しい本

デュルケーム『社会学講義』 

なんでもデュルケームが法について正面から扱った数少ない本なんだそうです。デュルケームは社会に犯罪があることは正常なことで、犯罪がない方が異常な社会と考えたようです。それはとんでもない弾圧を行なっていて自由の一切ない社会であり、全体主義のような社会でしか考えられないからだそうです。

私はまだこの本を読んでないのですが、今回書いているとふとこの本のそんな文句を思い出してこんなお話になってしまいました。もしかしたら自由と犯罪は結構密接な関係にあるのかもしれませんね。

デュルケーム『社会分業論』 

それでデュルケームは社会で人間が孤立し無規範な状態に陥らせないためには、人々の結びつきを作ることが大切と考え社会における役割(仕事とか)を分けて(分業)人と人の結びつく機会を増やすべきだ、と考えました。多分この本はそんなことを書いていたと思います。最初に読んだデュルケームの本でしたのではっきりとは私は理解できていない気がします。ちなみに読んだのは講談社学術文庫版でしたが、訳はこの方がいいそうです。もともとは現代社会学体系という物々しいシリーズに入っていて高かったのですが、最近ちくま学芸文庫に入って手に取りやすくなりました。ありがたい話ですね。

 

ヘーゲル『歴史哲学講義』 

ヘーゲルの有名な歴史哲学の本なのですが、最終的にヨーロッパや自分の哲学に至るような歴史を想定していて少し評判の悪い本でもあります。

じゃあなんで今でも重要なのか、といいますと、自由についての考え方が含まれていることもひとつあるかもしれません。ヘーゲルは人間の自由を古代社会から近代社会に至って解放されてきた歴史だと考えているらしく、古代ギリシアは大勢の奴隷によって支えられ自由であったのはほんの一部で、古代中国においては皇帝ただ1人が自由であり、ようやく近代にいたり万人が自由になった、というような考え方だったと思います。もうだいぶ忘れてしまっているので、気になった方はぜひヘーゲル先生から直接教わってください。

ちなみにマルクス主義がなんでプロレタリア解放なんて言うのかというと、ヘーゲルのこの歴史観をひいてる面があるからですね。人間は歴史的に自由になるのであって、搾取される階層があること自体近代の持つ自由の理念に反する、ということになるでしょうか。いろいろと難しいものと結びついてて、よくわからなくなりますね。

R.D.マッケンジー,R. E.パーク,E. W.バーゼス『都市』 

都市というものをはじめて社会学した本だそうです。なんでもアメリカの社会学にはシカゴ学派というものがあるらしく、急速に人が集まり大都市と化したシカゴを社会の実験室と見立てて非常に社会学の一分野が発展したんだそうです。そのひとつとして都市社会学というものが生まれたようですね。

ただ値段が高騰しています。薄い本なんですけどね。

 

次回の内容

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お話その150(No.0150)