日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

伝統や文化は経済の必要性(田舎でも儲かる商売として)や失われることによって(懐古主義/復古主義)や他国の尺度で整理(自国の西洋基準判断)されたり現在の観点から生み出されたり(近代の創出=捏造)していて、意外と新しかったりその都度創られたり理由がはっきりしていなかったり誤解されていたりする【ホブズボーム『創られた伝統』 】

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前回のお話

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国家的オリジナリティとしての歴史や伝統への疑問 〜守るべき歴史の困難

とりあえす歴史的な保守というものをヨーロッパ(的世界化、今ならグローバル化)に対抗するために国家的オリジナリティとして歴史が存在し、その上での国民性というものがあってそれを守らなければならない、と一応ここでは捉えておきましょうか。しかしこの歴史における綿々と続いているはずのもの、というものが、実はかなり怪しいものとしてある、という考え方があります。

 

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『創られた伝統』

前回ナショナリズムについての本としてホブズボームという人の本を載せてみました。この人が他の方たちと一緒に書いた『創られた伝統』という本があります。これが伝統というもののいいかげんさを暴露するような歴史研究となっています。

 

スコットランド高地地方の衣装

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ホブズボーム先生はイギリス人ですからイギリスを対象としています。たとえばスコットランド高地地方では民族衣装としてタータンチェック柄の衣装があるのだが、それは確かにその土地に住んでいた人々はそうしたものを着ていたが、当時のイギリス政府が弾圧してやめさせて忘れられてしまった。しかし滅んでからかつて馬鹿にしていたそうした衣装を貴族たちがとりあげ、熱心に復古運動を起こし再度定着した。それはスコットランド高地地方における固有の伝統として独自性を徴づけることに成功した。まったくもって、高地地方文化の独自性および独特の伝統という概念の総体は、懐旧のなせる捏造といってよい」(←斜字原文)と手厳しい評価です。

 

植民地支配下のインドにおけるインド文化の形成

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またインドが植民地の時代にイギリス人においてインド研究が行われることにより、イギリス人によってインドの古典が定着されていくことになった、ということも書かれています。インドには確かに昔からインドの歴史も文化もあるのだけれど、それを明文化したのはイギリス人(ヨーロッパ)で、ヨーロッパの思考形式のもと整理されている、というわけです。インドをヨーロッパ式に捉えているわけですね。そしてこれは多分、ヨーロッパが世界化することによってどこでも似たようなことが起こっていると思えてきます。

 

新しかったり、外から作られたりしている伝統や文化

そんなわけで歴史や伝統というものが、意外と新しい時代から遡って大昔からあるかのように作られていったり、または外部から規定されることによって生まれていたりして、綿々と続くものではない、ということが暴露されているわけです。

 

日本でも外国人(もちろんヨーロッパ人)が日本を分析したものをありがたる、という批判もありました。案外私たちが日本の歴史や伝統と思っているものも、近代に入ってから作り上げられたり、外国人によって形作られていたりするものもあるのかもしれません。ではこうした歴史や伝統に対して、一体保守はどうやって守るべきものを決めていけばいいのでしょうか。ここでも保守の困難というものは現れてくるようでした。

 

次回のお話

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気になったら読んで欲しい本

ホブズボーム『創られた伝統』 

ホブズボームの本。でもホブズボーム1人が描いたものではなく、複数の人が書いたものを一冊にしたものです。ですからテーマは同じなのですが扱っているものはバラエティに富んでいます。ただ長い本なので内容は私の説明だけでは相当怪しいので、気になった方は手にとってみてくださいね。伝統は近代になって創られたものだ、という観点を開いた古典的な本だそうです。

 

小谷野敦『日本文化論のインチキ』 

読んでないんですが、日本人が日本の特徴を捉えようとして行われる日本文化論がいかにおかしなものか、ということを書かれていると思う本です。日本人は外国人の日本論をありがたがる、とは小谷野敦が述べていたかと思います。

 

余談ですが京極夏彦の作品の中に、この捏造された伝統というものを使ったトリックがあったのですが、どの作品だったのかどうしても思い出せません。先祖伝来の水子の祟りが…というものだったのですが、あまりに作品が超大すぎて確かめ直せないのでした。

 

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お話その142(No.0142)