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『無限のリヴァイアス』における末端的権力使用者の例
ところで末端の人の方が権力をふるってしまうという例があるアニメの中にあります。『無限のリヴァイアス』という作品です。もう随分古い作品ですからご存知の方も少ないかもしれませんね(以下ネタバレありの紹介説明)。
事件の発端と推移
この作品は宇宙での航海士(?)となるため訓練船に乗っていた学生たちが、事故で取り残されてしまうお話です。大人たちはその事故でみな亡くなってしまい、学生だけで集団をまとめなければなりません。それどころか学生たちが乗っている船はテロリストと判断され、救助はおろか攻撃されてしまう始末です。
こうした中で学生たちの自治が行われていくのですが、最初は優秀な成績をおさめるエリートグループによって統治されていきます。しかしそもそも起こるべきでなかった事故の中でテロリストとしてまで追われるので、うまくやれるわけはありません。船内では不満がたまり指揮権を持つエリートグループに反感がもたれてしまいます。とうとう噴出した不満はエリートグループを引きずり下ろし、実行した不良グループが代わりに指揮権を握ります。
ですが不良グループも適切な判断をすることは出来ません。最初はおびえていた他の学生たちも、また不満が噴出していきます。そしてエリートグループとは違い他の人たちを配慮にいれない不良グループたちの統治は、あちこちで問題が現れてきます。そうした中主人公の友人の恋人が暴力事件に巻き込まれてしまい、友人は怒って自分たちでグループを作り暴力革命によって指揮権を握ります。
この作品はロボットものでもあり、主人公の友人たちはロボットを動かせるパイロット候補なのでした。そしてロボットの力を借りて言うことを聞かなければ船内の学生であっても攻撃する、と脅しデモンストレーションとして一撃を加えるのです。そしてこの実行力ある恫喝に恐れ、みなは言うことを聞くようになります。
しかし当然こうした統治は暴力による恐怖統治です。他の人々の間では今までとおなじように不満がたまり、鬱憤は広がっていきます。それをロボットによる船内攻撃という形で暴力をちらつかせることによって抑えているわけです。
代表者と参謀の権力
ただこうした統治形態を選んだ主人公の友人はやむにやまれぬ対策として、かなり苦慮したうえでの行動でした。いわば善意による悪行を自覚的に行ったようなものかもしれません。しかしこの友人を唆した人もいます。それは元々エリートグループにいた参謀役のような人で、いわば自分は表に出ないけど裏で代表となる人物を操ることによって喜びを見出すタイプの人でした。
そして主人公の友人が歯を食いしばりながらも恐怖政治を敷いていると、その参謀役が裏で好き勝手しているのでした。権力の矢面には主人公の友人を立たせ、目に見えないところでリーダーの威光を借りて自らがリーダーそのものであるかのように権力をふるうのです。参謀役は自分にはそこまでの力がないことは自覚しているのですが、権力者として振る舞うことは諦めきれていないのです。そしてリーダーの影に隠れながら、指揮権を持たぬ人々へと権力をふるうのでした。
小さな閉鎖的な関係性の中で、これだけうまく権力やその腐敗の仕方を描いたアニメは珍しいと思います。
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気になったら触れて欲しい作品/本
『無限のリヴァイアス』
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『無限のリヴァイアス』のアニメ。20年前の作品になるそうです。こうした系譜の作品はあまり受け継がれなかったのかもしれませんね。
ヴェルヌ『十五少年漂流記』
ゴールディン『蝿の王』
なんでもモチーフとした作品はこの2つだそうです。政治劇としての側面は『蝿の王』かもしれませんね。比べて読んでみると面白いかもしれません。
有賀弘,阿部斉,斎藤真『政治』
政治についての入門書。この中に矢面に立たず常にNO.2として居続けて権力をふるう人物の話も出てきます。まったく一緒ではないかもしれませんが、参謀役のキャラクターと重なるところはあるかもしれません。
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お話その148(No.0148)