前回のお話
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社会全体のイメージ化 〜政治も、社会的発言も、イメージ化されていく…
戦争の話ばかり書いていて疲れました。ちょっと話を元に戻したいと思います。
経済システムと消費社会
消費社会においてはイメージの方が具体的なものよりも上位にたちますので、物事もイメージ重視で動いてしまいます。そのもともとはきっと商品の販売で、物があふれる中どうやって購買意欲を持ってもらうか、というために、商品にイメージを結びつけて売ることになりました。これが商品に対してだけ行われるのではなく、経済を飛び越えて社会全体で起こるようになるのが消費社会である、といったところでしょうか(多分。詳しくはボードリヤール読んでね)。
つまり消費社会は経済の都合で生まれたものであり、資本主義というシステムの問題点を解決するために現れたものなのですが、一度そうして成り立った認識は経済だけでなく社会全体において同じように認識し、捉えられるようになってしまうわけですね。それがパンケーキやタピオカミルクティーなら構いませんが、政治家まで同じように商品化=イメージ化=キャラクター化されて消費対象となっては困ってしまいます。しかしもう20年くらいこんな感じですね。
TVと政治家
そもそもはTVの登場から始まるようです。よく知りませんが、佐藤栄作は新聞記者と対立し、TVこそ自らの姿を正確に表す、とTVでの発言を好んだそうです。
もともとTVはニュースもやればバラエティもやりました。ただ最初は棲み分けしていたそうです。TVは新興メディアでしたから出版の方が当時は強く、ニュースも出版よりで硬かったのかもしれません(時々昔の芸人さんが子供時代のニュース番組について話されていて、それらしいことを聞いた覚えがあります)。
それがどうやら混ざり合わさってきたのはニュースステーションからのようです。久米宏の番組ですね。久米宏はザ・ベストテンの司会を黒柳徹子と共に務めていましたから、もともとバラエティよりの人だったわけですね。それがニュースをやるようになり、バラエティの手法を取り入れたようです。
しかし、そこで毎日取り上げられる政治家の方でも、TVでどのように映り影響があるかということを学んでいきます。久米宏によれば、細川護煕と田中真紀子、そして小泉純一郎ははっきりとTVに出ることの意味を自覚していただろうと言います。
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/postseven/entertainment/postseven-641035
そして小泉純一郎によって総理大臣という権力の中心にいながら、自らを演出しイメージ化=キャラクター化して世論の支持を受けるようになりました。小泉純一郎の目玉政策は郵政民営化でしたが、焦点となった選挙の際、私がTVで見た時の記憶が確かならば郵政民営化に対する世論調査の結果は2%の支持でした。有権者の関心と優先順位として重視されていたわけではありません。強く言えば論外のものと言えたかもしれません。しかし小泉純一郎は勝利し、郵政民営化はなされました。
政治家自らの広告/物語化戦略=イメージ化
なぜそんなことが起こったのでしょうか。それは手法としては商品を売るための広告と同じだからです。郵政民営化という商品(政策)に購買者(有権者)は関心がありませんが、小泉純一郎という役者(政治家)が自らを使って演出し、重要なものであるようにイメージさせることに成功しました。その時役者(政治家)が役柄(キャラクター)と一致してみなされてしまう、いわばキャラクター化するのですが、それをドラマの中の配役のようにするためには役者も含まれる物語を用意する必要があります。そしてそれこそが小泉純一郎が宣伝した抵抗勢力であり、小泉純一郎(政治家=役者=ヒーロー)VS抵抗勢力(政治家=役者=敵対者)という関係の成り立つ物語として、消費可能な商品として、TV(メディア)の前の私たちに届けられてしまい、しかも商品においてそうしたイメージ化=広告になれきってしまっているため、そのまま商品の一種として消費されてしまったのです。
これがネット時代になって橋下徹元維新代表のように敵対者を罵る手法によって受け継がれ、今もそのエピゴーネンたちが政治の場を占めるようになってしまいました。現在も続いています。それどころか世界最大最強の権力者まで、同じ手段で選ばれてしまいました。そして先進国中で似たことが起こっています。
資本主義のもと、商品を生産から消費へと転回させた手法を他分野において適用させてしまった結果のひとつとして、現在の政治状況の姿があるのかもしれません(他にも理由あると思いますけどね)。
次回のお話
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気になったら読んで欲しい本
久米宏『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』
こんな話書くつもりじゃなかったんですが、書いているうちにふとこの本のタイトルを思い出してこんなお話になってしまいました。といいつつ、この本も読んでないんですけどね。
ただ久米宏がニュースをする際に気をつけたこととして、中学生が見てもわかるようにする、ということだったそうです。難しいものを難しいからといって、わからないままに受け付けなくさせることを乗り越えようとしたのかもしれませんね。それは間違ったことではありません。
ところで久米宏がニュースステーションをやっている時に島田紳助が見学に来たそうです。紳助は田原総一郎に日曜朝のニュース番組の司会を頼まれていました。サンデープロジェクトという番組ですね。田原総一郎は紳助を庶民派側の意見を代表する人として起用したそうです。その放送日前日、紳助はニュースステーションを見学しに訪れていたといいます。
たまたまその日は予算編成をめぐり、大蔵省の偉いさんと久米宏がやりあっていたそうです。それを見た紳助は、ボクには出来ん、といって逃げ帰ったそうです。そしてそのままホテルの部屋に朝まで籠城したと言います。
久米宏が振り返る「横山やすしと島田紳助」秘話|NEWSポストセブン - Part 2
久米宏の発言を読みますと、おそらく紳助は難しいことを正確に理解したうえで世の中のことに発言するような真似が自分には出来ない、と受け取れないこともありません。その上で役人と対等に戦うなんてことは自分には不可能だ、と正確に判断したのではないでしょうか。だからこそ、紳助はわからないことはわからない、という姿勢でニュースに臨んだのかもしれません。難しいことはわからないままではいけないかもしれないが、自分にはわからない、だから質問をする。これはこれで正しい姿勢だと思います。
その後芸人がコメンテーターとなることが増えました。今もそうです。それは芸人の地位が上がったということなのかもしれませんが、自分たちとは違う専門家の分野に足を踏み入れていることでもあります。それこそ紳助が大成功してしまいましたので、その地位がちらついて後続する人が途切れないのかもしれません。もしくは俺にだって出来るぞ、と思っているのかもしれません。
しかし忘れてはいけないのは、紳助は怯えたということです。紳助はボクには出来ん、と逃げて、その上でわからない自分を晒して専門家の前に立つことにしました。それがいつの間にか、わからないままでかまわない、わからないのはお前たち(専門家)が悪いのだ、となりコメンテーターは素人のまま発言するようになりました。そしてわからない素人でもわかる言葉、すなわち感情的な発言で難しい問題を単純化させてしまっています。これもまた難しい問題(商品)を感情的な言葉によってもイメージ化してしまう、消費社会の現れのひとつであるかのように思えてきます。そしてこうした手法を政治家までが使うようになってしまったわけです。
ですがTVタレントのキャスティングはTV局によって決められますが、政治家のキャスティング権は最終的には国民によって握られています。そのような政治家が登場するのは各々の政治家の責任ですが、それを選ぶのは有権者であり国民の責任になります。そのため現在の日本及び先進国の姿は、それぞれの国民の姿になるわけです。
…なんかめちゃくちゃ辛気臭い話になってしまいました。疲れてるんでしょうか。
島田紳助『いつも心に紳助を』
大塚英志『戦後民主主義のリババリデーション』
戦後民主主義のリハビリテーション―論壇でぼくは何を語ったか (角川文庫)
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小泉純一郎が自らをキャラクター化していっている、という指摘はこの本に書かれています。それだけでなく今回のお話はほとんどこの本に書いてあります。大体90年代末から2000年すぎくらいまでの論壇時評をまとめたもので、小泉純一郎ブームも含まれていたと思います。よければお読みください。
著者の大塚英志はボードリヤールを応用して日本の消費社会をよく分析していました。
ボードリヤール『消費社会の神話と構造』『象徴交換と死』
で、ボードリヤールの代表作。よくわからん書き方していますが、基本的なことはすべてこれらの本に書いてあるかと思います。
はぁ…なんか、本当に辛気臭いお話になってしまいましたね。政治についてなんか書くんじゃなかった…戦争と政治って、陰気な話題ばかりですね。でももうちょっと続きそうです…
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お話その128(No.0128)