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自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

希少価値の高い付加価値商品の商品的効果 〜価格の高騰、記号的差異化と希少商品の創造/捏造により新しい価値観を作る【ボードリヤール】

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希少価値商品的効果 〜値段の高騰、記号的差異化による希少価値化

とりあえず記号的差異化によって同じ商品をバリエーション豊かな商品群へと変化させることが出来ました。しかしここからもう一つ違う現象も起きてくるようです。

 

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記号的差異化によって生み出されるのは、同じ商品を違う商品のように見せることでした。靴の色や形が多少違っていたとしても、靴そのものとしての機能や品質が同じであれば、それは同じ商品であると見なすことも出来ます。商品の価値を使用価値に求めるとすれば、こんな記号的差異などなんら意味のない差異です。履き心地も耐久性も変わらないのであれば、赤だろうが黒だろうがそれは同じ靴と見なせないこともありません。

 

記号的差異化による社会的差異化

しかしそれを違うように見せるのが記号的差異化のなせる技で、事実ファッションなどこうした記号的差異化の見せ合いであり、集積であると言えないこともありません。じゃあみな同じ服着ろ、というのも乱暴です。けれどもこれが乱暴ではなかったのが身分制度のある時代です。社会階級によって厳格に着る物の色や質は決められていたようです。それは服装というものが象徴作用というものを持ち、それによって自己認識を強いるからです。

 

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よく高校デビューとか言いますが、それはファッションで人間関係の中での立ち位置が変わってくるからであり、お洒落ならば優位に立てるからです。だからダサいということはかなり致命的に人間関係を規定していきます。身も蓋もなく言えば、コミュニケーションにおける差別対象となりかねません。

 

これを利用し身分制度は服装によって階級固定させるため利用しました。身分制度のある時代、つまり前近代は服装の自由がなかったわけです。好きな服を着れるということは、それだけでも自由なのでした。今お洒落合戦があるとすれば、それは象徴作用におけるコミュニケーション上の闘争をしていることになり、大仰に言えば政治的ゲームをしているわけですが、それはより上位に権力による服装の強制がないからこそ自由にやりあえるのです。私たちの生きている社会が自由である一側面になるのだそうです。

 

記号的差異化とバリエーションのばらつき

話がズレましたが、ともかくこうして記号的差異化を行なっていますとバリエーションにもばらつきが出てきますね。赤はいっぱい出るけど黒はちっとも、といった感じです。またこうした差異化も定着させてしまっては商品の種類も固定化してしまいますから、次々と新しいバリエーションを生んでいかなければなりません。たとえ人気があっても変えてしまうこともあるわけです。

 

となると、人気はあるけどそのバリエーションの商品はあまりない、という状況が生まれてきます。

 

これが正規メーカーのみで市場(物を売買する場所のこと)か成り立っていればいいのですが、メーカーが離れたところで市場が成立することだってあります。ブックオフなど思い浮かべてもらえばわかりやすいでしょう。それでも本は増刷されることもありますし、版元を変えて復刊されることもあります。しかしゲームの場合、スーパーファミコンとかゲームボーイみたいな古いゲーム機を使わなければならない作品は九分九厘そのままでは新しく生産されません。幸い最近ではゲーム機経由で古いゲームも出来るようですが(よく知らない)、それでも色々事情のある(倒産したメーカーのものとか)作品は不可能なようです。

 

こうなると残されたのは既に生産された商品しかありません。となると残された商品を欲しい人で取り合うことになります。これによって生産ー販売という市場ではなく、残された商品ー販売という市場の中で値段が高騰することになります。

 

希少品の商品価値

いわば希少品の高騰ですが、この最たるものか美術品の売買です。これは産業革命以降の分業と機械による大量生産とは真逆の、一点物しか存在しない生産です。その意味では産業革命以前の職人時代の生産方法と同じなのですが、職人が椅子をいくつも作っても個別化しないのに対し、芸術家は作った作品がすべて1つの作品です。つまり変えが効かない希少価値があるわけで、ましてや芸術家が亡くなっていて、しかも美術史に残るような芸術家であればその価値はうなぎのぼりになります。物故者には新作は絶対に作れませんし、歴史的な評価などおいそれと変更できないからです。結果超お金持ちが所有したい絶対価値となって天文学的に思えるような値段がつくのですね(もっとも、ちゃんと芸術的価値があるから貴重なのですが、ここでは単に希少価値というだけに限ってお話ししました。芸術は金じゃねえぞ、って怒らないでね)。

 

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ちなみにアダム・スミスもこうした芸術の希少価値を労働力の観点から考えていて、芸術品はそれを生み出すのに莫大な労力(修行期間や制作時間)を要するので高いのだ、という説明をしていました。でもお金持ちが欲しがる論の方が、極度に高い理由納得いきそうな気がしますけどね。

 

記号的差異化による稀少品の創出

ともかく、芸術品が高いのはアダム・スミスの時代から認められていたわけです。経済学の誕生からあったんで、古くからあるわけですね。そしてこれを記号的差異化によって擬似的に生み出す方法もあるようなのでした。

 

それは一種の偶然性を商品の中に組み込んでしまうことです。

 

たとえば最近ですとスマホのゲームがありますよね。これはゲームの内容もさることながら、課金して回すことの出来るガチャで強力なキャラクターが手に入るかどうかが肝になってきます。しかし強いキャラクターというのは中々当たりません。希少価値が高いわけです。その希少価値を求めるためにお金を使ってもらうわけですね。

 

スマホのゲームであれば、中々手に入らないキャラクターは希少価値があるだけでなくゲームを有利に進めるという質的な差もあります。しかしこれを元来の記号的差異だけでやってしまうこともあります。スマホのゲームもガチャと呼ばれますが、もともとのガチャは丸い球体の中に小さなおもちゃが入っているものです。そして数種類の中から1つ手に入るのですが、その種類の中にも中々でないおもちゃを決めておくわけですね。するとそれが希少価値を持つことになります。

 

しかしこれが動物のおもちゃだとして、ライオンやゴリラは人気なのでよくでますが、ツチノコは珍しいので出ない、とします。しかしおもちゃとしてライオンやゴリラに比べて、ツチノコは何か質的な差があるでしょうか。少なくともスマホのゲームで出てくるキャラクターほどにはないと思います。なんならライオンかゴリラの方が嬉しいかもしれません。ツチノコは珍しいというだけで利点はなさそうです。ではなぜ欲しくなるのでしょうか。それは希少価値があるからで、なぜ希少価値があるかといえば、中々出ないからです。そしてライオンやゴリラとの差は、記号的な差異でしかありません。

 

こうして希少価値というものは記号的差異化によって生み出すことが出来るのでした。こうした考えを日本で広めるのに一役買った大塚英志はチョコエッグという商品が出てきた時に、自分たちが半ば冗談で言っていたことが本当に起こり出し困惑した、と述べていた気がします。

 

ともかくこうしてまた商品を消費してもらうための方法が生まれたのでした。

 

気になったら読んで欲しい本

【ハイスコアガール】
ROUND 1

ROUND 1

  • 発売日: 2019/01/25
  • メディア: Prime Video
 

 

この作品の中に、主人公の男の子がガチャガチャでツチノコが欲しくて苦戦しながら、少々卑怯な手段で手に入れた後に、そこまで欲しかったか、と自問するくだりがあります。記号的差異化によって作られた希少価値をよく表していると思います。

ちなみにこの作品はとてもいい作品で、今時珍しく真っ当な恋愛作品なのでした。美少女があふれているわけでもなく、意味もなく主人公をとりあっているのでもなく、ちゃんと片思い同士の三角関係が描かれています。こういう普通の人間関係はもう描くの難しいんでしょうか。レトロゲームの意匠に目が行きますが、それを抜いても立派に魅力的な作品と私は思います。

 

【モネイロン『ファッションの社会学』】 

ファッションが自由な時代にようやく可能となったことが冒頭に書かれていたかと思います。他の内容は忘れてしまいました。もしかしたら今回書いたことはここに書いてあったことかもしれません。覚えてない。興味あれば確かめてみてください(おいおい)。

【ボードリヤール『芸術の陰謀』】 

芸術の話はこの本に載っているらしいのですが、私は読んでいません。どうやら現代アートがホンモノかイカモノかということを越えて、マネーゲームの中で成立していくことを指摘したものらしいです。読んでないので全然違うかもしれません。ともかく消費社会の問題はボードリヤールを避けて通れないらしく、芸術もその範疇に入るみたいですね。

 

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お話その119(No.0119)