人間の認識の根源としての社会 〜集合表象っていいます
社会学的な宗教の在り方と社会の在り方
こうしたデュルケームの考え方は宗教を対象として生まれましたが、なんだか社会そのものの在り方とも似ているようにも思えてきます。別段特定の宗教を信じていなくても、同じように集合表象があってそこにある価値観などを当たり前のものとして受け入れている気もしますからね。となると、宗教も社会の一部、と考えられるかもしれません(まぁ社会学者が考えるんだから、そうなるのも当たり前かもしれませんが)。
人間の認識は社会(集合表象)から与えられる
ともかく、ここからデュルケームはまた面白い考え方をしていきます。未開部族の宗教が非合理なものに思えたが、しかしそれは社会的事実でありその内部の人間にとってはきちんと正当性があり自明な認識である。それは個人が自ら認識を作り上げているのではなく、社会から与えられたものが個々人の認識となる。よって人間の認識は社会から来る。
とまぁ、大体こんな感じになるでしょうか(間違っていたら申し訳ない)。
つまり、デュルケームは人間の認識は社会(もしくは集合表象)から与えられる、という風に考えているわけですね。とりあえず人間の認識は外から与えられる、という風に考えていると思っていいのではないでしょうか。
これはなんといいますが、私たちがそこかしこで耳にする、自分の考えを持て、とか、誰それの世界観、とかいう考え方とかち合いそうな気もしますね。こうした私たちのよく聞く考え方は、むしろ自分自身の中に持て、というもので、外から与えられるものではないように感じとれてしまいます。
私たちの価値観もまた世の中によって形作られている?
しかし、そうした、自分の考えを持て、とか、誰それの世界観、というものをいいもののように受け止めてしまっているのは、社会(もしくは集合表象)の働きによる、と言えるかもしれません。私たち個々人が、みながみな、自分の考えや世界観を持ったりすることを正しいと思っているとは限りません。しかし、あたかもそれが正しいように感じてしまう。もしくはそうした考え方に取り囲まれてしまっている。自分に合わない考え方が周りにあればそのように感じることもあるかと思います。それは何故かといえば、集合表象として私たちの属している社会の中で正当性を持って価値観化されているから、と言えるかもしれません。では何故それが正しいのでしょうか。実はわかりません。社会的事実として、自明なものとして私たちの前にあるからそれは正しいのです。それだけになってしまいます。
そんなわけで、デュルケームの言う集合表象は私たちの外にありながら、私たちの認識を形作っていくものとしてある“なにか”である、ととりあえず思っておけばいいかもしれませんね。これが宗教として考えるとよくわかります。宗教の外にいる私たちからすればよくわからないものを信じているように見えるけど、それは内部の人からすれば当然の認識になるのです。その理由は、となれば、人間は集合表象から認識を得ているからだ、というわけです。その関係が合理的なのであって、集合表象における合理性=整合性は問われない、ということになるのかもしれません。
内と外の価値観の正統性と異端
しかし問題はそれは宗教における場合に限らない、ということです。宗教を意味もなく信じているように思えてしまうのは、そう思う人が宗教の外にいるからです。つまり宗教は私たちの住む社会からすれば異端なのです。けれども私たち自身が生きている社会も、必ずある集合表象が成立しているはずです。それを私たちは認識出来ているのでしょうか。私たちの前提と化している社会からの認識、それをどうやって意識するのでしょうか。
実はデュルケームの考え方にはこうした問題もつきまとってくるのでした。
気になったら読んで欲しい本
【デュルケーム『宗教生活の原初形態』】
宗教生活の基本形態 上: オーストラリアにおけるトーテム体系 (ちくま学芸文庫)
- 作者: エミールデュルケーム,´Emile Durkheim,山崎亮
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/09/10
- メディア: 文庫
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宗教生活の基本形態 下: オーストラリアにおけるトーテム体系 (ちくま学芸文庫)
- 作者: エミールデュルケーム,´Emile Durkheim,山崎亮
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/09/10
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デュルケームの本。この話をすればこの本を載せるしかありませんね。世の中がよくわからないと思われる方はこの本を読んでみてはいかがでしょうか。ひとつの答え、とまでいうとよくありませんが、ひとつの考え方をかなり根底的なところまで与えてくれるかと思います。面白いんですよ〜。
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お話その89(No.0089)