前回のお話
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資本主義の勝利と歴史の終わり
マルクスの予言と元気な資本主義
マルクスの予言は今のところ達成されてはおらず資本主義は元気です。そして資本主義は死にそうにありませんし、独り勝ちしているようにも思えてきます。
しかしヘーゲルの歴史観を思い返してみますと、世界史というのは理念の戦いだったわけです。そしてこの100年くらい世界の共産主義化ということが大きな問題であり、米ソ対立による核の恐怖と冷戦状態は現実問題として非常に重大でした。しかしそれもソ連の崩壊と共に安堵の息が吐かれるようになりました。つまり共産主義と資本主義という理念の戦いが、資本主義の勝利として、ヘーゲル的に言えば世界史的に終わったわけです。
歴史は終わった?
こうしたことをアメリカの政治学者でもあったフランシス・フクヤマという人は『歴史の終わり』という本で書いたそうです(読んでない)。
【フランシス・フクヤマ『歴史の終わり』】
(読んでないのでなんとも言えないのですが、いっとき日本でも流行ったのか、昔の本を読むと色々言及されていたりします。文庫版もあるのですが出てきませんでした)
ヘーゲルの歴史哲学においては理念の闘争によって描かれるので、最終的に残った勝利者こそが理念として普遍的なものとして正しいことになりますので、資本主義というものは普遍的で正しいものであることが歴史的に証明された、というわけですね。そして資本主義の勝利は事実上覆されそうにないですし、またなにか他の理念によっても脅かされていそうにもないので、ヘーゲル的な意味での歴史っていうものは終わったのだ、とそういうことでしょうか。
【ヘーゲル『歴史哲学講義』コジェーヴ『ヘーゲル読解入門』】
(ヘーゲルの歴史哲学はこの本なんですが、これを元にしてヘーゲル学者だったコジェーヴ先生は、ヘーゲル的な歴史の終わった後の時代にアメリカ型の動物か日本型のスノビズムにしかならない、と述べたそうです。フクヤマの本はこの現代版でもあるのかもしれませんね)
資本主義国家アメリカの勝利宣言
もちろんこれは事実であるかどうかというよりも、資本主義国の盟主であるアメリカ自身による勝利宣言だとみなした方がいいような気もします。ソ連は崩壊した、ほかの共産圏も時期滅ぶだろう、しかしアメリカは残り強いままだ、だからアメリカこそが現世界の王者だ。というようなところでしょうか。
しかしそのアメリカも進みまくった資本主義によるグローバリズムによって国内の中産階級は空洞化し(らしい)、その悲鳴を吸収してトランプが大統領になってつい先日まで八面六臂の活躍をされていたのを見ると、果たしてフランシス・フクヤマの言った歴史の終わりは本当だったのかな、なんて思ってきたりもしますし、そのアメリカ自体が資本主義の運動によって自壊しつつあるのなら、なんかマルクスの予言がまだ続いているのかな、なんて思ったりしたりもしますし、ちっともわけのわからないヘンテコな世界に私たちは住んでるんだな、なんて思ったりもしたりします。
【浅田彰『「歴史の終わり」を超えて』】
(浅田彰の対談中なんですが、この中にフランシス・フクヤマもいて、浅田さん、かなり小馬鹿にして相手しています。真面目で難しいお話されているのに、その様子にちょっと笑ってしまいそうになります)
結局人にはあまり理解できないことが多いのかもしれませんね。あぁわからん。
次回のお話
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お話その307(No.0307)