日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

アリストテレス、プラトン、ソクラテスの三代師弟関係と哲学者の観照的生活と政治的実践の困難さ

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前回のお話

https://www.waka-rukana.com/entry/297/2021.02.05

 

哲学者の観照的生活とアリストテレス、プラトン、ソクラテスの三代師弟関係

ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)

ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者:プラトン
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Kindle版
 

アリストテレスが観照的生活こそが最も人間にとって高級であると考えたのは、それ相応に当時の背景というものもあるようです。ちょっとそのお話を今回してみようかと思います。

 

アリストテレスとプラトンとソクラテスの師弟関係

アリストテレスの先生はプラトンですが、プラトンの先生はソクラテスです。つまりギリシア哲学は三代はっきりと連続性のある直接的な結びつきがあるわけですね。そしてアリストテレスは観照的生活を理想として自分でも学問一筋みたいな生き方をしたかと思いますが、先生のプラトンやソクラテスはそうではありませんでした。

 

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ソクラテスと死刑

ソクラテスはほとんどその名と共に結びつけられた、有名な裁判と死刑の逸話があります。ソクラテスは町中でずっと人に議論をひっかけて若者をたぶらかし堕落させた、というもので、その結果ソクラテスは死刑になります。

 

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これはソクラテスの教え子の中に政治に関わってかなり自分たちの都市を危険に陥れた人たちがあって、その原因として先生であるソクラテスにまで類が及び指弾されたところがあります。もちろんそれは教え子たち自身の問題であってソクラテス自身の問題ではありません。そのためこの裁判は冤罪のようなもので、他の教え子たちはソクラテスを逃そうともしましたが、ソクラテスは都市への愛着から逃げることをせずそのまま死刑になってしまいます。

 

【ソクラテスの弁明】

(ソクラテス裁判の道筋と顛末はこの本にすべて出ています。現代におけるネット上での知識人に対する誹謗中傷と結びつけて読むといいかもしれません。やってることは似たようなものだと思います)

 

プラトンの苦悩と現実問題

それを若き日のプラトンは直接に体験したそうです。そのため世の中のとんでもない方向を正すためにどうすればいいか、という側面からも哲学が始まった、というようなことよ読んだ気もします(もしかしたら勘違いかも…)。そのためプラトンは超越した哲学者のように見えながら、しかしそのようなことはなく現実的な問題(つまり政治)にも強く関心があったそうです。

 

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プラトンが晩年の頃にある都市で政治制度を作るために協力して欲しいというようなことがあり、老齢であったプラトンは、にも関わらず向かっていって尽力しようとします。しかし相手は僭主でもあり、まったく上手くいかす失敗して帰ってきたそうです。

 

【プラトン『法律』】
法律〈上〉 (岩波文庫)

法律〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者:プラトン
  • 発売日: 1993/02/16
  • メディア: 文庫
 
法律〈下〉 (岩波文庫)

法律〈下〉 (岩波文庫)

  • 作者:プラトン
  • 発売日: 1993/04/16
  • メディア: 文庫
 

(プラトンのそんな様子はこの本になるのかな。私はすっかり忘れてしまいました)

 

プラトンとアリストテレスの政治的背景

プラトンがそのような考えを持ったのは、ソクラテス事件という背景もありましたが、プラトン自身都市の貴族階級でもあり、またまだギリシアが力があったころの時代だったからとも言います。しかし一方アリストテレスはアレキサンダー大王の家庭教師をしてマケドニアの庇護を受けていたくらいで、すでに周辺諸国の支配者はマケドニアでギリシアの力は落ちていました。またアリストテレスは貴族階級でもなかったそうです。

 

【ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝』】

(そんなアリストテレスの逸話はこの本だったかと思います。というか、古代の偉人たちの逸話は大抵この本の中にあります。一度読んでおくと便利かもしれません。ニーチェも好きでよく読んでいたそうです)

その上で先生であるプラトンの政治的失敗を見ており、なおかつプラトンの超越的な哲学の影響を最大限に受けているアリストテレス先生は、政治的な生き方よりも観照的な生き方の方を高級と考えたようです。そのためマケドニアに支配され腹の立っていたギリシアの都市民は、アレキサンダー大王が死んだと聞くなり反旗を翻そうとし、その際強い庇護を受けていたアリストテレスもソクラテス同様裁判にかけて死刑にしようとしましたが、アリストテレスは、二度も同じ方法で哲学者を殺す汚名を着せまい、などといってソクラテスとは異なりさっさと都市を捨てて去っていってしまいました。

 

観照的生活にも中々複雑な背景があるようです。

 

次回のお話

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お話その298(No.0298)