日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

初期資本主義社会における工場労働者としての女性の扱い 〜封建時代をひいた工場経営者のハーレムとしての女性労働者たち。より安価な労働力としての大人の男性から女性・子供への移行【エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』 】

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前回のお話

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経済構造の変化による転落の姿

社会主義者共産主義

オウエンが活躍した時代には他にも有名な社会主義者がいて、サン・シモンとフーリエという人がいます。エンゲルスはこの3人を空想的社会主義者として括って、自分たちはそうじゃなくて科学的社会主義なんだぞ、と説明しました(ですが読むと空想的社会主義にとても敬意を払っていることがわかります。違うのはそうした社会主義を支える部分、つまり資本論のような経済学の体系と唯物史観みたいな歴史観だ、ということでしょうか)。

 

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ちなみにこの当時の社会主義共産主義の違いとしてエンゲルス自身が説明しているのですが、それによると最近は社会主義というものはどこにでもあって手垢にまみれてしまっている、だから自分たちは社会主義という名前ではなく共産主義と名乗る、ということです。案外深みのない理由ですね。しかしそれくらい社会主義っていうのは当時ありふれていたらしく、私たちはそんなこと知りませんからマルクスだけしか思い浮かびません。ですがマルクスが現れて社会主義のチャンピオンになるまでにはそれなりの理由があるのでしょうね(あまりよく知らないけど)。

 

当時の労働者の姿を描いた風俗誌

さて、そんな社会主義があちこちで流行るくらいですから当時の社会状況は相当に悪かったようです。前回書いたオウエンの頃みたいに平気で子供を長時間働かせて問題と感じない時代ですね。こうした当時の社会状況を風俗誌として書いたとても面白い本があります。それはまだ社会主義者でもなかった二十歳そこそこの若者であったエンゲルスの本です。ちょっと覚えているところだけお話ししてみましょうね。

 

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安価な労働者への転落

資本主義が生まれたことによって経済システムがまったく変わってしまったのですが、それまでは職人が弟子入りしていつか親方になるのが一般的なあり方だったようです。しかし資本主義の利点のひとつは分業でしたね。1人の職人が1から10までかかっていたものを各工程にわけて10人でやれば100倍くらい生産できる、とこんな感じでした。

 

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こうなると以前職人として働いていた人たちはみな失業しますね。そこで工場はこうした元職人たちを雇うことになります。そのため職人は賃金で雇われる労働者に転落します。けど、こうした職人は一家の大黒柱なわけです。家族を養うために生活費を持って帰らなければなりません。そのため給料はそれに見合った額を支払う必要があります。

 

なにを当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、これが当たり前なものですから、当時の工場主たちはこうした元職人を雇うのをそのうちやめるようになります。支払う金が高いからです。ではより安く雇えるのは誰か、となると、元職人は当然男性ですから、もっと安く雇えるのは他の人間、すなわち女性と子供になります。そうすると大人の男性に支払うほどお金を払わなくてすみます。だってお前たち大人の男ほど働かないだろ、というわけです。こうしてより安価な労働者として女子供がターゲットにされたのでした。

 

性労働者への扱い

そして子供はどういう扱いをされるか、前回お話ししましたね。では女性はどうなのでしょうか。それは工場主のハーレムになっている、とエンゲルスは言います。

 

工場主は資本家ですから当然男性です。そして雇い入れる労働者は安ければ誰でもいいわけです。なぜなら分業が完成されて熟練の必要とされない仕事と化していますから、誰でもいいなら安い方がいいに決まっているからですね。そのため工場で働いているのは女性か子供ばかりになっています。そして女性ばかりの工場労働者の中で、ただ1人の男性である工場主が資本家として君臨しているわけです。クビにするのも賃金上げるのもその人の自由です。労働者である女性たちは逆らえません。結果その工場で働く女性たちを工場主は好きに出来てしまうというのです。

 

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これをエンゲルスは封建領主の持っていた初夜権を資本家の工場主が引き継いだ、と述べていました。中世であれば領主はその地域の支配者で、領内の女性の初めての経験を自由に奪うことが認められていたそうです。それを封建制の崩壊した今、工場主が行使している、というわけです。

 

こんな状態ですから社会は荒れるし人心は乱れるのは当たり前な気がしますね。女性も子供も安価な労働力として好き勝手使われて、それ以上に使われているわけです。そして男性の方は家族がそんな状況にあっても賃金が女性や子供よりも高いから決して雇ってはもらえず、家での立場などなくなっていきます。そして困ったことにこうした壊乱の時代とでもいえそうな状態にもかかわらず、資本主義の運動は活発化して国力はあがりにあがりイギリスは日の沈まぬ国として近代史において燦然と輝いていくのでした。どうしたらいいんでしょ。でもそりゃ怒って国家に対抗しようとする勢力出てくる方が当たり前な気もしますよね。

 

次回のお話

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気になったら読んで欲しい本

 

エンゲルス『イギリスにおける労働者階級の状態』 

エンゲルスが描いた当時のイギリスの風俗誌。あんまり酷いんで読んでいて面白くなってしまう不謹慎な本です。私たちからすれば歴史の風景として受け取れるものですから、へぇ、そうかぁ、と普通に読書出来てしまいますが、これがそのままの世の中で過ごすとしたらとても嫌です。

 

次回の内容

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お話その135(No.0135)