前回のお話
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スペンサーと社会進化論
イギリスと功利主義と経済学と社会進化論(みな弱肉強食?)
経済学も功利主義もイギリスというわけで、もしかしたら似たような考え方がイギリスにはあるのかもしれませんね。やはり世界で一番最初に産業革命を起こして世界帝国となった国ですから、考え方もなにか一脈通じるものかあるのかもしれません。それが各分野それぞれに形を変えて現れているのかもしれませんね。
ダーウィニズム
たとえば弱肉強食の考え方に社会ダーウィニズムというものがありますね。これはもちろんダーウィンの考え方(進化論)を社会に当てはめて考えたものだと思います(あまりよく知らない)。ダーウィンの進化論の考え方は自然淘汰というものですが、動物は色んな個体が生まれても環境に適した個体が最も生き延びやすく、結果残った個体同士が子孫を残すので、その特徴のある方へと変わっていく(進化する)、ということになるでしょうか(間違ってたらごめんなさい)。それを動物の世界だけではなく人間の世界にも当てはめたわけですね。
社会的ダーウィニズム
こうした社会ダーウィニズム、もしくは社会進化論というものは、ダーウィンとは別に進化論を考えていたらしいスペンサーという哲学者の考えなのだそうです。自然世界の在り方を社会に当てはめるわけですから人間も動物同士の関係、弱肉強食になるのも当たり前な気もしますね(でもダーウィンの考え方がそのようようなものだったのかは私は覚えていません。またスペンサーはダーウィンから考えたわけではなく独自に考えたようなことを読んだ覚えがあります)。
スペンサーの影響力
しかしスペンサーの考え方は当時かなり人気があったようです。というのも社会が進化=成長するための理論とみなされたようで、まさに成長を求める国において強く支持されたそうです。ではスペンサーが最も支持された国はどこかというと、アメリカと日本だそうです(これもどこで読んだんだったかな…忘れてしまいました)。
アメリカについてはあまり知りませんが、それでも鋼鉄王のカーネギーがスペンサーに会った時のことを自伝に書いていたのを覚えています。日本ははっきりしていて、明治政府の要人自らがスペンサーと親交を結びかなりアドバイスをうけていたそうです。
(Wikipediaにもわざわざ日本との関係が項目に入っていますね)
そのためスペンサーの本は明治にたくさん翻訳されています。困ったことに明治にしか翻訳がなく、今日本語で読めるものはあまりありません。忘れられた思想家といえるかもしれませんが、最近になってアンソロジーが出ました。なんでもリバタリアニズムの祖として見なおしてみよう、と思われているようです。でもリバタリアニズムがなんなのか私はよく知りません。どうも個人の自由をとても尊重する考え方のようですね。
お金持ちからも重税をとらず自由に任せるとやっぱり弱肉強食になってしまうような気もしますが、なんとなくスペンサーとは関係ありそうな気は一応しますね。
それはともかくダーウィニズムのそもそもであるダーウィンはなぜそのような自然淘汰の考え方を持ったのでしょうか。それを書きたかったのですが、長くなってしまったので今回は終えることにします。
ちなみに次回はこうしたスペンサーの社会進化論や社会ダーウィニズムのもととなったダーウィンの進化論が、もともとはマルサスという人の書いた経済(つまり社会)についての考え方を自然世界に応用したものであって、実は進化論自体が社会の理論から生物学に入りまた社会の理論へと変わっていった、というようなお話です。そして本来社会についての考え方であったものが一度生物学という自然科学に入り込んでしまったために社会科学よりも正しい自然科学を背景にしているものとみなされ、こうした弱肉強食の適者生存の理論がより真理のように受け取られた、というようなことです。もし今回のお話に興味持たれたら次回も読んでみてくださいね。
次回のお話
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気になったら読んで欲しい本
ダーウィン『種の起源』
ダーウィンの本。有名な本ですね。進化論がどんなものか知ってるようで案外知らないので読んでみると面白いかもしれません。でも私は読んでもあまりわかってないような気がします。まぁ、いつものことですけど。
岩波文庫もあり私はそちらで読みましたが、せっかく新しい翻訳があるのでそちらを載せてみました。
スペンサー『ハーバート・スペンサー コレクション』
スペンサーはこれか、世界の名著に入っているものくらいしか簡単に手に入らないと思います。
スペンサーの主著は『総合哲学体系』といって十巻本らしいのですが、最初の『第一原理』が戦前、他の『社会学原理』や『倫理学原理』は明治にのみ翻訳があるという、日本語で読むにはちょっと困った状態です。未訳のものもあります。とにかく明治時代にはスペンサーの翻訳はとても多く、AmazonでもNDLでもいいので検索してみたらぞろぞろ出てきます。1800年代の訳が並んでてなかなか壮観です。
またスペンサーは社会学の祖の1人であり、社会学の歴史なんかにはオーギュスト・コントという人と一緒に巻頭におかれるのを常としている印象です。ですがアメリカの機能主義という社会学の代表者であるマートンは、学問がその開祖の名前を忘れていないのは不幸である、なんて書いていました。進歩してないってことになるからでしょうか。でもコントもスペンサーも社会学といった印象ではなく歴史哲学みたいに見えたりします。スペンサーは社会進化論だから、社会を進歩させたらその過程は歴史になるのかな。そういやコントの弟子はヘーゲル哲学をドイツで知った時師匠とよく似てると思った、なんてどこかで読んだ覚えもあります。多分世界の名著の中だったんじゃないかなぁ。
カーネギー『カーネギー自伝』
で、そのスペンサーと会った時のことを少し書いてあったかと思う本。たしか最後の方じゃなかったかな。もしかしたら一章さかれていたかもしれません。難しい哲学を講じる渋面の人を想像していたら、とても社交的でユーモアのある明るい人だった、といった印象が書かれていた気がします。でもすごい大物同士のつきあいですよね。どんなことお話したんでしょ?
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お話その132(No.0132)