日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

【梅棹忠夫『文明の生態史観』】大陸の歴史と辺境であることの余力の意味 〜梅棹忠夫によるヨーロッパと日本の近代化の原因の分析

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大陸の歴史と辺境の余力 〜梅棹忠夫によるヨーロッパと日本の近代化

ユーラシア大陸と日本の近代化

世界史ってユーラシア大陸の歴史みたいだな、と思っていると、ちゃんとユーラシア大陸から日本の近代化を考えていた人がいました。梅棹忠夫はなぜ日本とヨーロッパだけが近代化したのか、という問いを立てて、大陸は歴史的に大陸内での争いに疲れ果てていて、大陸の端っこにあるヨーロッパと日本だけが余力が残っていたのだ、といった内容を述べたことがあります(ただ梅棹忠夫は大陸と書き、ユーラシア大陸とは書いていなかったと思います)。

 

大陸の中心勢

ユーラシア大陸の覇者といえばチンギス・ハーンとかオスマン帝国とかかと思いますが、あまり知らないので説明することが出来ません。ともかく古代と近代の間の時代はヨーロッパは中世で世界史から取り残されたような状態だったようです。ではどこがすごかったかというと、中国とイスラームだそうです。このどちらもが大帝国で、もっというと中国に対抗できるのはイスラームで、イスラームに対抗できるのは中国だったのかもしれません。どこで読んだか忘れましたが、ヨーロッパが十字軍で成果をあげれたのはイスラームが東で中国と戦っていて西まで手に負えなかったからだ、という話もあったかと思います。相手にしてもらえなかったんですね。

 

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ただこの時にヨーロッパはイスラームで進んだ哲学を知り、しかもそれがアリストテレスから発展したものだったというので、昔に戻れ、とルネッサンスが起こったのだ、とか読んだ覚えがあります(ちょっと自信ありません)。

 

疲弊した大陸内部と余力を蓄えた辺境

梅棹忠夫はヨーロッパが辺境で大陸(中国やイスラーム)が栄えていたことを逆手に取り、大陸の方が近代に至るまでに疲弊して力を使い果たしていたのだ、と考えたようです。それは梅棹忠夫が人類学者で大陸中を現地で調査し、あちこちで荒廃した古代遺跡を目にしていたからだそうです。そのため大陸は歴史的に大きな力がぶつかってエネルギーを使い果たしているように思われたようですね。そして代わりにそれまで力を蓄えていたヨーロッパが近代化し、ついで日本が西洋を取り入れて近代化したんだ、といいます。そしてヨーロッパが辺境だったのは大陸から離れた立地上の条件であり日本も同じだというのです。それだけでなくヨーロッパと日本を第一地域、大陸を第二地域としてわけました。洋の東西ではなく、こうした大陸に対する地域差で考えようとしたみたいです。

 

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取り入れたものによる一貫性と雑種性

そしてもう一ついえば、ヨーロッパもまたイスラームを経由して優れた思想や学問を取り入れました。ただヨーロッパは日本と違って取り入れたものを自分たちの祖先として結びつけられる関係性をもっていましたので、一貫したヨーロッパ像を描くことが可能でした。しかし日本は昔は中国、近代はヨーロッパ、戦後はアメリカ、と取り入れる相手がバラバラなのでそんな真似が出来ず、加藤周一のように雑種文化論になってしまうのかもしれません。還れるご先祖様がいないわけですね。

 

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未来像としての万博

ともかく梅棹忠夫の考えは戦後の日本でとても評価されたそうです。それは敗戦の中自信を失った日本人を鼓舞するような役割も果たしたそうです(福田和也がそんなこと書いてたかと思います)。そしてその梅棹忠夫が参加して未来像を描いたのが、今以て高度成長期の日本人において忘れられない大阪万博なのでした。

 

気になったら読んで欲しい本

【梅棹忠夫『文明の生態史観』】 

梅棹忠夫の本。この『文明の生態史観』で上に述べたようなことが書かれています。私のいいかげんな理解では間違いもあるかと思いますので、興味のある方は手に取られることを願います。

内容とは別に、この本はとても読みやすく書かれています。難しい漢字も排し、説明も簡潔で、みんなこんな書き方してくれれば読むのに苦労しないのに、と思わないでもありません。そしてとても面白くもあるのでした。

 

 

次の日の内容

日本の近代化の特徴としての、ヨーロッパに対する地球の中の周縁の意味とは 〜世界システム論の中に位置づけられた日本【ウォーラーステイン『近代世界システム』】 - 日々是〆〆吟味

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 お話その76(No.0076)