日々是〆〆吟味

自分で考えていくための参考となるお話や本の紹介を目指しています。一番悩んだのは10歳過ぎだったので、可能な限りお子さんでもわかるように優しく書いていきたいですね。

文学の数学(構造主義)化 〜数学の応用による物語の類型(付:『わたしの知的生産の技術』/プロップ『昔話の形態学』/橋爪大三郎『はじめての構造主義』)

スポンサーリンク

スポンサーリンク

 

人文科学の数学化 ~物語はパターン?

世界認識=科学の数学化

ニュートンの業績によって物理学が数学(力学)によって体系化され、数学の力が圧倒的であると知ったヨーロッパ型学問はすべてを数学化しようとしました。それが自然科学ではとてもうまくいったのですが、残念ながら人間や社会に当てはめようとしたら少し問題が出てきたのです。しかしそれでも学問の数学化は変わらず進めようとされています。ただあまりうまくいっていないだけです。

 

f:id:waka-rukana:20200807165449j:plain

 

さすがに哲学は数学化されてはいないと思いますが(というかそもそも不可能な気もしますが)、社会科学は熱心です。最も数学化が成功しているのは経済学と言われ、次いで社会学、一番ダメなのが政治学、と言われています。これらは社会現象を捉える社会科学という枠組みの学問ですが、人間を対象とした人文科学でも同じように数学化が求められました。それが記号論や構造主義というもので、ソシュール的な言語観のもと数学的に基礎付けようしたのでした。

 

文学の数学化の試み

面白いのは文学でも数学化を求める欲望があったことで、小説をいかに客観的に捉えることが出来るかということで努力してきたみたいです。

 

f:id:waka-rukana:20200807155219j:plain

 

ちょっとまた横道にそれますが書いてみましょう。

 

プロップと魔法民話の構造

レヴィ=ストロースと同時代のロシアの民話学者にプロップという人がいました。この人はロシアの民話を研究していて、その中のカテゴリーの1つに魔法民話というものがあるのですが、この魔法民話の物語パターンを数えてみたら役にたつだろう、と考えて抜き出してみたのです。プロップの当初の目論見では様々なパターンが得られて魔法民話の豊かなバリエーションが得られるはずでした。しかし結果はたった1つの物語パターンしかないことに気づいたのです。

 

ひとつの物語パターンと機能の組み合わせによるヴァリエーション

ではなぜ同じ物語パターンでしかないのにいくつものお話があるように思えるのでしょうか。

 

それはプロップによると、基本は1つの物語パターンなのですが、そのパターンを支えるのに物語の機能が存在し、それが任意に組み合わされているからだ、というのです。そしてプロップは魔法民話には31の機能があるとしました。これを組み合わせていくつものお話が存在しているわけです。しかしどの物語も31の機能の中に収まってしまうので物語パターンは1つということになります。

 

f:id:waka-rukana:20200807155058j:plain

 

これはソシュール的に考えると、物語パターンが1つの言語体系、機能が1つ1つの言葉、その組み合わせが各お話や発話行為に当たるわけですね。プロップはソシュールから直接学んだわけではなくゲーテから示唆されてこの発想を得たそうなのですが、完全に構造主義そのものなのでした。

 

プロップやレヴィ=ストロースの応用

またプロップは自分の仕事はロシアの魔法民話に限ると区切ったのですが、プロップのしたことを見て他の分野でも同じ真似が出来るのではないか、と考える人がいてもおかしくありません。そしてレヴィ=ストロースはフランス人でしたので、同じフランスの中で小説に応用しようとしたのがロラン・バルトという人でした。他にも哲学、精神分析、マルクス主義などに応用しようとした人たちがいました。こうした思想運動がフランスで盛んになり大きな成果をあげたのです。そのため構造主義はフランス現代思想とも呼ばれもするのでした。

 

 

参考となる本

【わたしの知的生産の技術】 

社会科学の数学化について、この本の中で小室直樹が書いています。他にもたくさんの方々が自分の勉強法などを述べていらっしゃいますから、勉強をしようかな、と思っている方は参考になるかもしれません。たまには古い方から学ぶのもいいと思いますよ。

【プロップ『昔話の形態学』】 

プロップの本はこちら。創作したい人はとても便利な考え方と思うのです一読をお勧めします。ただし品切れのようです。軒並みプロップの本は高くなっている気もします。それどころか水声社から出ている『叢書 記号学的実践』はことごとく高いです。この分野の古典中の古典がみな入っている素晴らしいシリーズなのですが、かなり手に入りにくくなってしまっています。残念だなぁ。

他にも小説について面白い分析をしたものがいっぱいあるんですけど、そのうち紹介できればいいですね。

 

【橋爪大三郎『はじめての構造主義』】 

で、またこの本です。入門書で読んでいるのはこれくらいなので同じものしか紹介できません。

余談ですが、この本の著者である橋爪大三郎は上に載せた小室直樹のお弟子さんです。小室直樹は私塾を開いており、錚々たる面々が学びに来ていたそうです。ご本人も大変面白い、規格外の方だったらしいのですが、あまりに面白すぎるのでこんなところで書ききることが出来ません。またいつかお話出来たらいいですね。

 

次の日の内容

https://www.waka-rukana.com/entry/2019/07/08/193040

前の日の内容

https://www.waka-rukana.com/entry/2019/07/04/060037

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村

 お話その46(No.0046)